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11月7日 土曜日 晴れ

□ オークション物語 1

われわれ中古車販売に携わるものが言う「オークション」とは、中古車販売業者を対象に全国各地で開催される、中古車オークションのこと。 ヤフオクなんかと違って、会員登録が必要なオークションだから、「競り人」は、中古車を業とするプロだけの世界だ。

もともとは、メーカー系ディーラーに入った下取り車を、中古車業者に流通させるために作られた仕組みで(それ以前はディーラーの営業マンとの中古車業者の個人的つながりによる「庭先取引」がほとんどだった)、各自動車メーカーや、中古車販売店の団体(中販連)がそれぞれ独自に会場を持ち、だいたい週一回くらいのペースで開催していたもので、昔は、ノンビリしていたから、魚の競りのように、コンダクターがいる「手競り」でやっていた記憶があるが、中古車オークションそのものをビジネスとして運営する会社があらわれて、形態が一変した。

POSシステムというプッシュボタンによる入札装置が普及し、インターネットや衛星回線によるリアルタイムの実況が可能になり、今では会場に行かなくても全国の競りに参加できるシステムができあがっている。

システムができあがっているといっても、最終的には人のやることで、中古車業界の海千山千のプロが集まり、大きなお金が動く場所だから(3万円のダイハツも、1000万円を越えるフェラーリも、一瞬にして、ほんの20秒くらいで、競り落とされるのだ)、なかなか思ったようにいかないのが現実で、吉見自動車ではそれは店主の仕事になっているが、キビシイ競りのあと、地団太を踏んでいることもよくある。


ではそれは、実際にどう進んでいくのか。

ひとつの物語として。
たとえば、車を探させていただいているKさんとの、先週の動きはこんな具合だった。


→ 11/03 火曜日 

始業時のルーティンとして、必ずひととおりチェックする各地のオークションの出品リストに、Kさんの探している車がひっかかった。
金曜日6日に名古屋で開催されるオークションにいるようだ。

7月から探している車で、当初から秋ごろにはなんとか、といっていた車だから、まずはKさんにこの情報を伝えなければならないが、その前にもういちど出品表で、車の内容を確認する。


オークションの出品表は、事前に取捨を判断するための基本情報になるもので、そこには出品者が記入した車の情報やスペック(年式や装備などの記載にミスがあるとペナルティとして罰金を徴収される)、オークションサイドの検査員による内外装のチェック、そして判断のひとつの基準となる内外装の評価点が記載されている。

これを見ると、プロなら、大まかにはその車がどんな状態で、販売する価値があるかないか、あるいは展示するのにどれくらいお金がかかるかということの見当がつく。 車の画像は、不十分ではあるが、モニター画面で見ることができる。

オークションに出てくる車を判断するときの大きな基準が、出品表にある評価点というものだ。

これは、「4/C 」とか、「3.5/B 」といったカタチで表記されるもので、最初の数字が外観を含めた全体の評価点、後のアルファベットが内装の評価点になる。

全体の評価点は最高が6点(その上に新古車のSという評価がありますが)、内装はAからEまであり、私たちが在庫として仕入れる場合の基準は、「4・B」=小さなキズがいくつかあり、少し加修すれば商品として展示できるというランクのものがベースで、基本的には(特別な理由のない限り)これ以上のものだけが対象になる。

評価をつけるのは各オークション会場の査定員と呼ばれるプロの査定士だが、相当な台数を査定するので、チェックもれなどのミスは起こるし、会場によっても、点数の甘いオークションや厳しいオークションがあったりもするが、その辺は私たちなりの経験でアジャストしている。

ただ、それを商品にするプロのオークションだから、事故車や距離の改ざんに関してはとてもシビアで、もしその車が事故車なら(価格に対する影響が大きい情報なので、明確な基準の下に、厳密に査定されるし、落札後のそれが判明すれば返品+ペナルティという処置が出品者に下される)「A (Accident)」とはっきりと記載されるし、走行距離が、車検証やその車が以前に出品されたとき(もしそういう経歴があればだが)より少なかったりすれば、コンピュータのチェックが入り、「走行不明」と必ず記載されることになっているから、そういうことに関しての信頼度は高い。

車のことだから、最終的には、実際の車を見てからの判断になるのはあたりまえだし、遠方のオークションのときは、契約している現地の調査員からの実況見分のレポートがなければ、うかつに競りに挑めるものではないが、この査定士が判定した評価点というのは、週に1万台以上ある(輸入車だけで)車を、フルイにかけて「荒選り」するための有効な情報なのだ。


Kさんが探している車は、年式も新しいし、Kさんの性格から考えても、「4・B」ではダメで、最低でも「4・5」、できれば「5」、内装はぜったいAでなければならないことは、これまでの打ち合わせの中で、ヒシヒシと感じている。

で、今回のこの車だが、評価が「5・A」で、年式や距離は問題はない。
ただ、車の色が、ご希望のカルサイト・ホワイトではなく、ブラック(内装ベージュ)なのだ。

とりあえず、Kさんに電話。

Kさんからは、先週の連絡で、ブラックが出てきてもいちおう知らせてくださいね、とはいわれていたものの、そんなにすんなりと色の希望を変えられるわけがないはずだから、これまでの何台かと同じように、値段のチェックだけになるんだろうと、タカをくくっていたのだが・・・。

つづく


吉見自動車のストックリスト
by yoshimi-auto | 2009-11-08 18:50 | diary
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あるボルボショップの日常、悪戦苦闘の日々。
by yoshimi-auto
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