a super fine saturday. 昨日にも増して快晴。 紅葉狩りには絶好の週末、山々も色づいて、箕面の山はおそらく大混雑。 なんとなくショップの前の道路も車が多い。 ただこの好天も明日までのようで、「移動性」高気圧というだけあって移りかわりが早い。 週末だが、居残り組みも多く、また出来上がっている車もお客様の都合がつかなかったりで、メンテナンスに関する電話は多かったが、珍しく閑散とした土曜日になった。 こういうときは、特筆すべきこともなく、かといって何もなしというわけにもいかないので、例によって、過去のブログからの記事で、お茶を濁すしかないわけで。 今回は、少し前にも書いた「純正じゃない」パーツについての考察。 *************************************************************** 2006年01月15日 '96 ボルボ850GLEエステート ― 純正じゃないパーツ 年明け早々にMさんの850エステートが入庫しました。 昨年の2月にご購入いただいた車で、サービスランプのリセットやオイル交換をかねて、12ヶ月点検をして欲しいというご依頼でした。 納車時の走行距離が71,300km、現在の走行距離が86,000kmですから、この1年で約15000kmを走破したということになります。 以前のこのコラムでの試算では、土日中心で、ウィークデイも買い物などに使い、月に一回は遠距離ドライブをして、お盆とお正月に長距離の帰省をする、といった使い方で、だいたい10,000-12,000kmということでしたから、Mさんの走行距離はそれよりもやや多目といったところです。 Mさんからメールでおうかがいしていたことは下記のようなものでした。 1.「SERVICE」ランプの点灯 マニュアルによると,走行距離などに応じて点灯するそうですね。15,000キロくらい走っているのでそろそろ,ということなんでしょうか。 2.左前輪のあたりの不具合 a. 右に1回転ほどハンドルを切って微速前進すると「ゴキゴキッ」と鳴る(特に朝の始動時) b. 走行中にずっとゴロゴロいうときがある a は前からあったのですが,最近音がひどくなってきたので。b は最近です。エアコンを長時間つけていると似たような音を立てるので,最初はそれかと思ったのですが、エアコンを切っても鳴り続けるのでよく聞いてみると、どうも左前輪あたりからの音のようなので。 3. 左側前後ドアが開きにくくなっていること グリスアップで対応できるんでしょうか。前回は確かそれをしてもらったと思うのですが。 4. 2→3速の変速ショック 下り坂などアクセルオフの状態で3速に上がると,ショックとともに「カコン」と音までする。踏みっぱなしであがるときはない。 5. オイル&オイルエレメントの交換 近くのオートバックスで頼んだら,「オイルは交換するけど,外車のエレメント交換はしてない」といわれてしまったので。 1 の「SERVICE」ランプ(正式な名称は、サービスリマインダーといいます)は、ユーザーに点検整備時期を知らせるためのもので、850の場合前回のリセットから1年を経過するか15000km走行したとき(どちらか早いほう)に点灯します。 このランプは、イグニッションスイッチをオンにしたあと点灯してすぐに(2分間)消えてしまいますから、あまり気にされない方も多いのですが、12ヶ月あるいは15,000kmというのは、車のメンテナンスにとってはひとつの大きな目安ですから、Mさんのように、これが点いたら点検に入れるというのが原則だと思います。もちろん点検後、コンピュータテスターでリセットしてお渡しします。 5 のオイル交換は定番のメンテナンス。 当社で使っているエンジンオイルは、「DAYTONA GTM-EUROTURBO SM/CF 10W-40」という欧州車用(メーカー曰く)の半合成タイプのものです。 エンジンオイルのクオリティや銘柄に関しては諸説あるようですが、要は同じオイルを適切なインターバル(使用状況によって変わってきますが、通常3000-5000kmごと)で交換するということに尽きるんじゃないかと考えています。 3 のドア開閉時の不具合については、すぐに原因はわかりました。 850はドアのヒンジがあまり強くないので、メールをいただいた時点では、そのヒンジのトラブルではないかと疑っていたんですが、入庫していただいた車を見ると、巾6-7cmのドアのモールが変形してドアから浮き上がっており、ドアを開けるたびにピラーと接触しています。 左だけというのはやや不可解ですが、こういったプラスティックパーツは、経年で消耗する代表的なパーツで、Mさんの850も今年で10年目ですから、ある意味順当な(?)消耗といっていいのかもしれません。 また冬場は気温が下がってプラスティックやゴム類は硬化してしまいますので、こういった現象がおこりやすい時期でもあります。 処方箋は、プラステックモール(前後ドアとフロントフェンダー)の交換です。 4 の変速ショックは、試乗をしてみましたが症状の再現ができませんでした。 症状を確認せずに修理作業をすすめるのは「メクラ修理」と呼ばれていて、あまり好ましいカタチではありません。不具合の現象がわからなければ直ったときの確認ができないからです。 ただ、下り坂アクセルオフで、2速から3速にシフトアップするというシチュエーションそのものが、やや異例な感じがします。 通常ATシフトショックというのはどんな場合でも必ず発生していて、オンアクセルの場合はそのショックをエンジンの回転やマウントで減衰しているのですが、上記のようなトルクがかかっていない状態でシフトアップする場合にそのショックが顕著に現れるということは有り得ます。 Mさんの850の場合、通常走行でのシフトアップ・ダウンの動作はきわめて順調ですし、念のためマウント類も精査してみましたが極端な消耗はないということでしたので、今回は何も触らずにお渡しすることになりました。 もう少し様子を見てみようということです。 で、2 のフロント足回りの「直し方」が、今回のテーマです。 850に限らずFF車は、車の前の部分に駆動機能が集中していますので、重量的な負担が大きく、その重量を支えるサスペンションやステアリングのジョイント類は、FR車と比較すると早く消耗します。 850も例にもれず、日頃240や940といったFR車を多く扱っている私たちにすれば、前の足回りの消耗が早いというのが定説になっていまので、a/bどちらもその辺が異音の原因ではないかという予想をしていました。 工場で分解して点検してみると、スタビライザーとコントロールアームを繋いでいるリンクロッド(エンドリンク)にガタがあるという報告がありました。 スタビライザー周辺は走行による負担の大きいところで、特にこのリンクロッドは850の場合真っ先にやられるパーツです。 単純に異音の修理をするのであれば、このパーツを交換すればいいだけですが、このパーツがガタが出るほど消耗しているとすれば、足回りの他のパーツも同様に消耗していると考えるのが順当です。 また、私たちの経験からしても、kコントロールアームに同じようなガタが出ることも多い車種ですから、予防ということも含めて、Mさんにはこのコントロールアームや、タイロッドエンドなどのステアリングのジョイントパーツを含めた足回りのメンテナンスを提案させていただきました。 車の修理・メンテナンスにはいくつかの方法があります。 もっとも手っ取り早いのは、不具合の原因となる(なりそうな)部位を見つけ(これがけっこう難しいんですが)、そのパーツをメーカーから供給される新品のパーツ(純正パーツ)と交換するというやり方で、正規ディーラーでの修理は、基本的にこの方法になります。 まあこの方法が、修理する側からいうといちばん安全で確実なわけですが、実はもっとも費用がかかるスタイルでもあります。 もちろん修理=トラブルに対する対応ですから、悪いところを素早く発見し、適切に手を入れ、確実に直すということが最優先されるべきなんですが、個々のオーナーにそれぞれの事情や車に対する想いの違いというものがありますから、正規ディーラーのように直球勝負だけでは、どうしても不満や疑問が残ってしまうことがあるのではないでしょうか。 ひょっとしたら、もっとうまく(安く)直せたんじゃないか? ホントにあのパーツを交換する必要があったんだろうか? 修理という作業に対する納得度に関しては、サービスを提供する側が説明責任を果たし、オーナーの方が納得されるまでキチンと説明するというのが大原則なんですが、それ以前のこととして、その作業に取り掛かる前に、その修理にかかわるすべての選択肢(情報)を提示できているかどうかが、こういったモヤモヤした想いをオーナーの方が抱かなくてもいいようにするための大きなポイントではないかという気がしています。 実際のところ、不具合に対してのケアにはいろいろなアプローチが可能です。 単純に部品を交換するということだけではなく、その部品をハンダや溶接で修理する(今のようにモノも豊富になく、流通も整っていない時代はこれが主流でした)という方法もありますし、必要な部品をワンオフで造ってしまうという手もあります。 極端ではありますが、そのまま「だましだまし」乗り続ける(壊れきるまで放置する)、という荒業もなきにしもあらずです。 また部品交換をするにしても、純正の新品パーツ、純正じゃない(「社外品」と私たちは呼んでいます)新品パーツ、リビルト(オーバーホール済みの中古品)パーツ、そして中古パーツといったいくつかの選択肢があります。 ですから、まず最初に私たちがやらなければならないのは、その不具合に関するできる限りの情報を集め、考えうるすべての方法(それぞれのリスクを含めて)をそのオーナーの方に提示すること、そして同時にその選択肢の中から、個々のお客様の考え方や事情に合った、そして経験値から割り出したもっとも適切な方法を提案することではないかと思うわけです。 そういった諸々を検討し、Mさんには社外品でのリフレッシュをおススメしました 。この場合それが費用対効果(コストパフォーマンス)のバランスがもっとも良いと考えたからです。 サスペンションなど足回りのパーツに関しては、中古を使うということはよほどのことがない限りあり得ないですし(消耗度合いが目視では判断できない)、リビルトというのもありません。 Mさんが費用のことよりも安心して乗れるということを重視していらっしゃることもよくわかっていましたので、基本的には新品パーツを使うというのが暗黙の了解事項となっていました。 そういう意味で、当初純正品の使用というのも考えたのですが、試算してみたところ、全体のリフレッシュとなると、パーツ数も多くなり社外品と純正品の金額の差が予想以上に大きかったこと、そして過去に同じパーツを使用した時のデータやメカニックの意見を考慮してクオリティに不安がなかったことが決め手になりました。 現在私たちが使っている、いわゆる社外品のルートは大きくいうと3つあります。 ふだん純正パーツの仕入れに使っている部品問屋さんからのルート、もうひとつはボルボ専門の社外パーツを取り扱っている商社から仕入れる台湾製社外品のルート、そしてアメリカにあるIPDというボルボパーツ専門の会社から直輸入するルートです。 これらから仕入れるパーツは純正品のように耐久テストを経て世に出た製品ではありませんので、耐久性に関して明確なデータは少なく、それなりのリスクはあるものと思いますが、私たちの経験の中で、クオリティの確認ができているパーツも数多くあります。そういったパーツは、修理においてもメンテナンスにおいても積極的におススメしていきたいと考えています。 ただ、何が何でも社外品というわけでは決してなく、部位によってここは純正パーツでなけりゃというポイントもありますし、ストックしている部品取り車から外した中古パーツで充分ということもあります。 またエアコンのコンプレッサーやステアリングラック、ATミッションなんかは新品の供給がなく、リビルト品を使用するのが基本です。 大切なのは、ただやみくもに安いからということではなく、それを使う部位やコストのバランスを考え、プロとして的確な判断をすることではないではないかと思います。 修理にせよ、メンテナンスにせよそれにかかる費用(=維持費)はできるだけ少なくしたいというのは、車を持つ誰しもが思うことです。 また同時に、どうせお金を使うのであれば、できるだけ安心感をもちたい(信頼できる部品と確かな技術でケアしてほしいということですね)ということも考えるでしょう。 なんだか医療費とよく似ているようにも思いますが、ドクターの立場である私たちからいわせると、それは「矛盾を孕んだ願望」というもので、正直なところその願望を100%叶えることはなかなか難しく、ほとんどの場合、今回のMさんのケースのように費用対効果のバランスで決めていくことになります。 100%が難しいということになれば、次の選択肢は、最小限の費用で最大限の効果ということになってくるからです。 もちろん車のメンテナンスに関する最終的な決定権はのその車の所有者にあります。 ただ、私たちにはそのメンテナンスにかかわる情報をお客様にお伝えする役割があるわけですから、この「純正じゃないパーツ」をしっかりとチェックして、安くて確実なメンテナンスに役に立つノウハウを提案していきたいと思っています。 いずれにしてもまずは、オーナーの方がその車のことをどのように考え、この先どういう風に乗って行こうとされているかを、私たちがしっかりと把握するということからですね。 **************************************************************** みなさま、どうぞ良い日曜日を。 吉見自動車のツイッター 吉見自動車のストックリスト
by yoshimi-auto
| 2011-11-26 18:51
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