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11月3日 木曜日 曇り

cloudy holiday.

文化の日。

明治節なんていう人はさすがにもういないだろうけれど、昭和の日(2006年まではみどりの日)と同じように元は天皇(明治)の誕生日で、さすがにハッピーなんとかにはならない。

平日の休日は年に何回もないけれど(今年は5回)、連休とはちがって、なんとなくのんびりした空気が漂っているようで、twitter や facebook も心なしかいつもより静かなようだ。

ショップも、昨日が定休日で今日が祝日なのでさすがに人の出入も少なく、車を見に来ていただいたお客様は何組かあったが、修理関係は納車が一台だけだった。


こういうときは例によって温故知新。

HPの「クレーム日記」のある記事を再掲します、テーマは「予防的メンテナンス」。

ちょうど7年前の11月に書いた記事ですが、事情はこのときとまったく変わっておらず「予防的メンテナンス」は、車の整備にとって、やはりひとつの大きなテーマだ。

いつも書いているように、一般的に「故障」といわれているものの実態のほとんどが、部品の寿命が尽きたことによって発生する不具合なので、それを防ぐためには、その寿命が尽きる直前に部品を交換するというのがもっとも効率的で効果的であることはよくわかっているけれど、今ちゃんと動いているものを未然に交換するというのは、なんとなくもったいないような気がしてしまうので、心理的にもちょっとした勇気の要ることだし、その「直前」の判断というのは、プロにとってもやはりきわめて難しいものなのだ。

だから、このメンテナンスはこちらからあまり強く推すものではないと思っているが、不安を取り除くという意味ではこれほど効果的なメンテナンスはないわけで、とくに240のような旧い車を乗っていくにあたって不安をお持ちの方や、なかなかわれわれのところに車を持ち込むことのできない遠方のお客様には、ひとつの提案としておススメすることもある。

いずれにしても、いまだに正解のみつからない難しい問題のひとつである。


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2004年11月08日  '88 ボルボ240GLワゴン ― 予防的メンテナンスということ


車のメンテナンスには、対処的なものと予防的なものがあります。

対処的なメンテナンスは、不具合が発生したとき、何かが壊れたときに、それに対して施すメンテナンス(=修理)、買っていただいたお車を保証でケアするのは、この対処的修理です。
また、予防的なメンテナンスは、この先不具合が起こる可能性がありそうなので、「転ばぬ先の杖」的に、部品の交換をすすめていく手入れ。 オイルやブレーキパッドなどの消耗品の交換もどちらかといえば、この範疇に入ります。

対処的なメンテナンスは、基本的には不具合の修正ということですから、原因を探り、それを修理する、あるいは悪くなった部品を交換する、ということで、私たちがお預かりする車の大半がこれなんですが、難しいのは予防的なメンテナンスの方です。

車に限らず、機械を構成するパーツにはそれぞれ寿命というものがあります。
日々修理でお預かりする車の場合、突発的に機械が壊れてしまう「故障」よりむしろ部品の寿命が尽きた事による不具合ということの方が多いというのが、私たちの偽らざる実感です。

この部品の寿命を判断して、適切なアドバイスをさせていただくということも、私たちの重要な仕事のひとつなんですが、これが実に難しい。

新車からの詳細な整備記録簿でもあれば、いつ何kmでこの部品を換えているから、次はこれくらいのタイミングですねとか、これはまだ一回も交換されていないですから、そろそろ交換の時期かもしれませんね、といった提案もできるのですが、中古車の場合、すべて揃っているということはめったにありません。
また、車の診察には、レントゲンもCTスキャンもありませんから、その判断の大半は、目視や問診、あるいは経験とカンに頼らざるを得ないのが実情です。

厄介なのは、その部位によって予兆があるケースと、いわば突然死のようなカタチでいきなり寿命が尽きてしまうケースがあるということです。

*

そういったことを、改めて考えさせられた実例がありましたので、ご紹介したいと思います。

このクレーム日記にも一度登場したことのある、Yさんの1988モデルのボルボ240ワゴンのケースです。

Yさんの240、今年の6月末にご購入後初めての車検を受けさせていただきました。
(この車検というシステムも、車のメンテナンスという視点から見ると、問題の多いシステムなんですが、この問題については、今は置いておきます)

今回の車検では、納車(前回車検)から1万5千kmほど走行しておられましたので、ブレーキパッドやタイヤのローテーションといった基本整備、そして240ワゴン定番メンテナンスのひとつ、リアゲートの再配線の作業を行いました。
また、足回りにもかなり消耗の気配があり、オーナーのYさんからのご依頼もありましたので、前後のショックアブソーバーとストラットマウントの交換、そして懸案であった(異音が発生していたのです)クランクプーリーの交換を、1ヵ月後の7月末に施工しました。

そのYさんから、SOSの電話が入ったのが10月19日の夜です。

「高速で立ち往生しています。 キュルキュルという音が急に大きくなって、エンジンルームから煙が出てきました。」

異音がエンジンの回転とリンクしているということでしたので、ベルト関連の異常ではないかと判断しました。
煙は、おそらくベルトが焼きついてしまったためだと思われます。
240のベルトは3本(メインのベルトはWになっているので実際には4本)で、それぞれエアコンのコンプレッサー、パワーステアリングのポンプ、そしてメインのベルトがオルタネーターとウォーターポンプ、クーリングファンを駆動させています。

ベルトの異常がエアコンやパワーステアリングのものであれば走行機能にはほとんど差し支えないといってもいいんですが、メインのベルトに不具合が発生していると、ウォーターポンプが作動せず、冷却水が循環しなくなってしまいますから、オーバーヒート → エンジンアウトという最悪のシナリオまで考えなくてはなりません。

「ここ(名神高速道路の側道)にとまっているのは怖いんで、ゆっくりとそこ(当社)まで走っていっていいでしょうか?」、ということでしたが、そういった危惧があるということを説明し、ロードサービスで、至急入庫していただくようにお話し、緊急入院ということになりました。

翌日、入庫したYさんの240を取り外して点検してみると、オルタネーター(発電機)が完全に焼きついていました。焼きついたそのオルタネーターは、今までに修理したり交換したりした形跡がありませんでしたので、経年的な消耗による部品の損傷と思われます。機械としての寿命という診断です。

結局、このオルタネーターをリビルト品(オーバーホール済みの中古品で、準新品的な品質があります)に交換し、焼き切れたベルトを新しいものと交換して、なんとか事なきを得ました。

考えたのは、このオルタネーターの交換を、あの時におススメしておくべきじゃなかったか、ということです。

実は、7月にクランクプーリーを交換させていただいた後に、プーリーを交換してもまだ少し音が残っているんですが、ということを、Yさんからお伺いしていました。 ただその時の点検では、ベルト関連の不具合は発見されず、作動音の範囲という判断で、車をそのままお返ししていたのです。 
ひょっとしてその音が兆候ではなかったか、あの時オルタネーターの限界を察知することができなかったかという想いを、どうしても捨て切れませんでした。

この修理の経過を説明していく中で、オーナーであるYさんとも、あの異音をもう少し深く探っていくべきだったかとか、不具合の兆候をどういう風に感じとるかといったようなことを話し合いました。
今回のケースは、結果的には一歩遅れという感じになってしまいましたが、本当に必要だったのは「壊れていない部品を換える勇気」だったかもしれないですね、という話になりました。

壊れていない部品を換える勇気。

言葉では簡単にいえますが、費用のこともあって、なかなか難しいことだと思います。
誰だって余計なお金は使いたくないわけですし、できることなら、修理や部品の交換をすることなく車に乗っていければそれでいいわけですから・・・。

たとえばボルボの場合、エンジンやミッション、ボディといった主要なところは、10年くらいでへこたれるものではありません。 ただ、ラジエターやオルタネーター、パワーステアリングやエアコンといった補機類は、経験的にいうと、10年10万kmというのが、寿命の大きな目安ではないかと思っています。

もちろん、それまでの乗られ方によって消耗する部位は変わってきますし、どのようにケアされていたかによってずいぶん状態に差がでてくるものですが、納車した車を10年乗っていただくと仮定した場合、これらの補機類は、いつか必ず手を入れなければならないパーツであることは間違いありません。

逆に言うと、一回交換しておけばおそらく2回目ということがないパーツということもいえるわけです。

こういった部品を、年式や走行距離、過去の整備記録やその状態を目安に、先手を打って交換してしまう。

240であれば、定番ともいえるラジエターの3層化が代表的な例でしょう。 
つまり、プロとしての経験値の中で、はっきり判っている弱点を補強したり、経年消耗が進行しているパーツを早めに交換してやる、といった手入れが、私たちの考える「予防的メンテナンス」です。

*

車のメンテナンスは、どうしても後手に回りがちなものだと思います。
壊れたら修理する、まあこれが当たり前の対応ではあるのですが、それは常に(稀なことであるにせよ)今回のような、いきなり立ち往生というリスクを孕んでもいます。 

メンテナンスをサポートする立場から、今回のようなケースでは、勇気を持って壊れていない部品を換えてみるということを提案してもいいのかもしれないと、考えさせられてしまいました。特に、それが240のように、最新でも新車から11年(当時)が経過しているモデルであればなおさらかもしれません。

もちろんそれは、私たちサポート側の慎重かつ厳正な診断と、オーナーの方の決断が必要なことですが、車は人間の身体と違って、大きなリスク(物理的な)なくパーツの移植ができるわけですから、未然にトラブルを防ぐといった目的においては、ある意味理想的なメンテナンス(保守整備)ではないかと思います。

メンテナンスの主役は、あくまでもオーナーです。
私たちはオーナーの方をサポートして、お車の点検や整備に対するアドバイスを発信することはできますが、最終的にはオーナーにその判断が委ねられます。

予防的メンテナンスというのは、技術的にもなかなか難しいことなんですが、私たちとすれば、その判断のお役に立てるよう、できるだけ敏感にその予兆を察知して、的確なアドバイスをさせていただくということに努めていくしかありません。

どちらにせよ、日々の「気づかい」こそが、そのメンテナンスの第一歩であるのは間違いないようです。

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後手に回るよりは先手必勝で、というスタイルであります。


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by yoshimi-auto | 2011-11-03 18:08 | trouble shooting
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あるボルボショップの日常、悪戦苦闘の日々。
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