13th moon. 十三夜。 十五夜の月見は中国から来た風習だけれど、十三夜「後の月」は日本独自のものらしい。 モノゴトが満ちる少し前の余白を愉しむというのは、いかにも陰影礼賛の国らしい所作。 「十三夜に曇り無し」って言うらしいけど、なんか雲が垂れ込めてきた。 大陸の高気圧が、南岸にいる前線を吹き飛ばしてくれたらいいんだけど。 定休日明け。 最近、ちょっと驚いたことがある。 それは、国産車のブレーキのこと。 あるとき何気なく駐車場に停まっている某社の軽自動車の後輪を見ると、ボルボでは見慣れたディスクローターが見えない。 もうボルボを取り扱ってからずいぶん経つので、それはなんかとても珍しい景色で、ドラムブレーキなんだ、と思い出すのに数秒かかってしまい、そして愕然とした。 最近の軽自動車って、なんかすごく走行性能もよくなっているし、リモコンで開閉するスライドドアやポケットに入れておけばイグニションが回るスマートキーなんかもついていて、スゴイなあと思っていたが、ブレーキがいまだにドラムとは・・・。 はっきり言うと、ドラムブレーキというのはただ止まるためだけの制動装置で、耐水性能や耐熱性能が低くて、軽く踏んだら軽く減速し、強く踏んだら強く減速するというスピードコントロールのための装置、つまり人間が車の速度を調整するためのツールであることが求められる欧州の乗用車の世界から見ると、前世紀の遺物なのだ。 そう思ってから気になりだして、いろいろな車をチェックしていると、驚いたことにそれは軽自動車だけのことではなく、たとえばタウンエースノアといったファミリー向けのミニバンや、あろうことか今世の中でいちばん売れている車(今日発表された9月の車名別新車販売台数によると、「プリウス」が3万3197台で4カ月連続の首位)プリウスにもドラムブレーキのものがある(すべてのグレードかどうかは知らないが)ことに気がつき、さらに愕然とした。 技術的にディスクブレーキに一日の長があるのはわかっていることだから、メーカーがドラムブレーキを採用する理由はもちろんコストのことしかない。 もちろん買いやすい車にするためにコストダウンを図ることは企業努力であり、その恩恵を受けるのはわれわれユーザーだからそれを否定するわけではないが、その優先順位はその企業の姿勢そのものではないかと思うのだ。 テレビの広告でアピールできるグリコおまけのようなキャッチーな電動装備にお金をかけるか、安全、つまり目立つことはないけれど、その車を運転する人の命を守るかもしれない装備にお金をかけるか。 簡単にいうと、軽自動車や国産の1500ccの車はその辺をチョイ乗りするための車で、そいうった車で雨の日の高速道路を走ることは、とても危険だ(4輪ディスクの車と比べるとはるかに)、ということである。 たとえばボルボは、日本で言うとスズキ自動車クラスの生産台数の小さなメーカーだけれど、工場にあるイエテボリに、世界一のメーカーであるメルセデスベンツと同じような規模の安全センターを持っていて、そこで毎日のようにクラッシュテストを行い車を潰している。 それは、車をより多く売るためではなく(第一義的に)、自分たちの作った車で人を怪我させたり、死なせたくないという想いからきているのではないかと思っている。 そういうメーカーの作った安全装置と、それを付けないと売れないからシブシブ(ディスクブレーキと同じように、技術はあったのにセールスポイントになるまで決して標準で装備することはなかった)付けた安全装置では、決定的にクオリティが違うような気がして仕方がない。 一事が万事、このドラムブレーキも同じことのように思える。 日本の自動車メーカーは優秀な車を造っているし、日本車は世界中でとてもたくさん売れているけれど、なんとなく誰からも尊敬を受けているような気がしないのは、そんなことが原因なんじゃないだろうか。 いくら燃費が良くても、安心じゃなきゃだめだよ、やっぱり。 and so on, □ stocklist
by yoshimi-auto
| 2011-10-06 21:29
| column
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