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2月11日 金曜日 雪のち曇り

2671回目の紀元節。

夜半というよりは、朝方から降りはじめた雪が、車の上にうっすらと積もっている。
最大20cmという予報で、じつは内心ワクワクしていたが、5cmではちょっと不充足。

昼前に雪はあがり、午後になってほとんど融けてしまった。


この雪で阪神高速が通行止めになって、アポイントメントが2つ流れたが、昼過ぎから修理の納車が4台、入庫が1台と、昨日予想していたより盛況(?)な一日。

たださすがに商談はありません。


今週は、この祝日のことを意識しながら動いたので、ほぼ予定通りに作業が進み、週末納車予定のものはすべて完了し、週明けから作業を始めるものもすべて部品の手配は終わっている。また昨日と今日あらたに入庫してきた車も、それほど難しそうな気配はないしそして明日明後日の入庫予定の2台はどちらも車検。

怖いのは突発的なSOSと、納車した車の不手際だが、考えてみれば年間を通してこんな風に平和に週末を向かえることは、けっこう珍しいんじゃないかという気がしてきた。

こういうときにこそ、平和じゃなかった時のことを思い出すのは意義があるかもしれないと考えて、われわれにとって最大の悪夢である、「症状が出ない」というやっかいな状況のことを記したHPクレーム日記を再録することにした。

題して『長期入院』、今から4年前の記事ですが、今も同じことを時々やっています。

人間と同じで、愛車を入院させるオーナーの方のご心労もよくわかりますが、その愛車を預かる私達も、けっこう四苦八苦しているわけで。


Here you go !


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2007年08月13日  '90 ボルボ240GLワゴン ― 長期入院


車のトラブルは、その現象が確認できないときちんと直すことができません。 

それが作動する、しないといったシンプルな不具合であれば、それを確認するのはごく簡単なことなんですが、異音、異臭、微振動などある一定の条件のもとでしか発生しない不具合の症状はなかなかやっかいです。
日々その車を使用されているオーナーの方が何らかの異変を感じていらっしゃるわけですから、何かがその車に起こっていることは間違いないわけですが、出たり出なかったりといった断続的な現象で入庫されたときに、その現象が私たちに確認できないということはよくあります。

実際の症状や現象を確認することさえできれば、専門的に扱っている車種がほとんどですから、その原因や対応策を探っていくのは経験的にそれほど難しいことではありません。 ですからまずは、その現象が発生したときの車の状況を詳しくインタビューして、その再現に努めるというのが修理の第一歩となります。
ただ、その発生状況にあまり特定性がないことや、お預かりした時になかなかうまく出てくれないことも多く、場合によっては何も触らずにお返しするということもありますし、逆にその現象を確認するために長期のお預かりを余儀なくされるケースもあります。

そういった長期入院のケースをひとつ、ご紹介しておきます。

4年前にご購入いただいたYさんの、1990モデル240GLワゴンです。

Yさんの240ワゴンは、お預かりしてから(しかも2回目の)20日目にやっと現象がでました。 オイル漏れです。

この件で最初にお預かりしたのは5月26日、どうもATFが少し漏れているようですということでした。
Yさんの240ワゴンは、その2ヶ月前にATの不調でキックダウンワイヤーを交換し、ついでにということで同時にATF・ATFフィルタ・ATFオイルパンガスケットなども交換した車でした。 ですから、漏れているのがATFということになると、なにか私たちの作業に不手際があった可能性もありますので、急行で代車をお届けして車を工場に引き取りました。

Yさん曰く、「ガレージにポタリと雫が落ちている、赤い色をしているようのでATFのように思える」、ということでしたが、お預かりした車を見てみると、オイルパン全体にニジミのようなものはありますが、AT周辺で特に顕著な「漏れ」は見えません。
そのままの状態で2日ほど様子を見ましたが状態に変化がなく、前回のメンテナンスの不手際で発生したものだとしたらもっとも疑わしいと思われるオイルパンのボルトをとりあえず増し締めをして、いったん車をお返ししました。 現象を確認できないままの作業ですから、やや消化不良気味な感じではありましたが、周囲の状況やこれまでの経過などから考えると、今のところそれ以上に触りようがないというのがメカニックの意見でしたし、これでうまく直ればという淡い期待ももっていたのですが・・・。

次にYさんからお電話をいただいたのはその12日後、翌6月の10日でした。
「この間ほとんど乗っていなかったんだけれどやはり雫が垂れてきた、前と同じ感じです」、とのこと。 
クレームがらみのトラブルですから、2回目となれば原因をしっかりと究明して今度こそ完治させなければ、ホームドクターとして整備を任せていただいている値打ちがありません。 Yさんには、長期戦になるかもしれないけれど、まずは症状を再現することを最優先したいということをお伝えし、再びお車を引き取りました。 今回の入庫先は工場ではなくショップのガレージ 、とにかく症状が発生するまで、という気持ちです。

前回車をお返ししてから12日目での発症でしたので、2週間程度お預かりすればなんとかわかるかもしれない、というのがメカニックと私たちの希望的観測でした。 前回車を引き取りにうかがったときに、かなり前傾状態で保管されていることをメカニックが確認していましたので、できるだけ同じ状態を再現すべきと考え、Yさんのガレージと近い角度になるようにリアホイールを持ち上げ、雨のかからない屋根下で観察を始めました。

1週間後(6月17日)・・・・・・変化なし
2週間後(6月24日)・・・・・・変化なし

ガレージの床もきれいに掃除して、ちょっとの変化でも判るように備えていたのですが、とりあえずの目安であった2週間を経過してもまったくその気配がなかったので、Yさんにその旨ご報告し判断を仰ぎました。 とりあえずいったんお返しするか粘るかということです。
私たちも、症状の出ないままにお預かりするのはいささか心苦しいのですが、そうかといってこのまま何もわからずお返しするというのはたいへん不本意でしたし、Yさんも時間がかかっても今回で決着させたいというご意向でしたので、結論は「続行」でした。

車の修理でこれほど長期間、しかも動かさないままでお預かりすることはめったにありません。
ただこの240の液漏れに関しては、その前の私たちの整備が原因となっている可能性があること、前回のお預かりで解決できなかったこと、そして何よりもオーナーであるYさんの、なんとか直したいという気持ちが強かったことが、この長期入院もっとも大きな要因であることは間違いありません。 メンテナンスの仕事は、そのオーナーの意志に動かされて成り立っているようなものですから。

そして20日目(最初の電話から35日後)・・・・・・ついに発生!

朝見たときには変化がなく、今週もダメかとあきらめていたその日の午後、ごく微量ですが1滴ガレージのフロアに垂れています。 エンジンオイルなのかATFなのか、あるいはほかの液類なのか見ただけでは判断がつきませんが、とにかくオイル状の液体です。

大急ぎでメカニックに知らせ、その場でその液がATFであることを確認し、そのまま工場に入庫させました。
リフトアップされた状態でよく観察し、漏れている箇所を正確に特定することが、この修理のすべてといってもいいくらいですから、不具合が再現できたタイミングで一気に解決を図りたかったわけです。

ピットに入れて点検してみると、キックダウンワイヤーのミッション側の入り口からのものと、あっさり判明しました。

ワイヤーが通っているキャップ状のプラスティックパッキンが緩んでいて、そこからの漏れが確認されたのです。 おそらくそのパッキンのはめ込みがゆるく、車の振動などで外れかけていたというのが真相のようです。 
部位的にある程度平らな停車状態であればATFに浸るところではありませんし、車を使用していれば液がその場所に溜まるということもありませんから、液が漏れるということはあり得なかったわけで、結果的に、Yさんのガレージの形状(一定の角度での前傾姿勢)と長期乗れなかったという使用状況が重なって発生したオイル漏れということになります。 ですから、状況再現のために車を傾けた状態で観察したことが正解で、もしそうしていなければ永遠に判明しなかったところでした。

原因が特定できれば対応は簡単で、そのパッキンをしっかりと嵌めなおして修理完了です。

こういう風に判ってみればほんとうに他愛もないことだった、というのは車の修理によくあるパターンなんですが、発見できるのとできないのでは大きな違いで、原因がはっきりと判ったことで(もちろんいつも今回のように粘り勝ちできるわけではなく、長期間お預かりしてもどうしてもその兆候が現れないケースもあるんですが)、メカニックも私たちもすっきりとした気持ちになることができましたし、何よりもオーナーのYさんにちゃんとした報告をできることで、やっとプロとしての責任を果たせたという安堵感でいっぱいでした。 

気に入って購入した自分の車に乗れないのがどれほどストレスの溜まることか、ということを私たちもよく知っています。 もちろんその間できるだけご不便のないように代車はご用意させていただいていましたが、都合1ヶ月にわたる愛車の長期入院に耐えていただいたYさんには感謝です。
その車や私たちの仕事に対するオーナーのご理解がなければ、こんなアナログで原始的な修理はできることではありません。

ひょっとしたら、もう少し合理的な方法があったのかもしれませんし、その内容(たとえばその車種特有の特徴的な不具合など)によっては、だいたいの様子をうかがって「カン(もちろん充分な経験値に裏打ちされたものですが)」で進めていくという修理もなくはないのですが、結果的に余計な出費につながる可能性が捨てきれませんし、何よりも最初の現象が確認できなければ、それが解消したという確認をすることができず、修理としては不充足なカタチになってしまいますから、今のところこのスタイルで続けていくしかないんじゃないかと思っています。どういう方法であれ、お客様の不安を解消することこそが最優先事項だと考えるからです。

修理に100%というのはないものですが、それでもそのことに携わる私たちとすれば、「直ったと思いますがとりあえず乗ってみてください」といった曖昧なお返しの仕方より、できれば「これが原因でした、ちゃんと直っています」といってお返しできるほうがいいですからね。

車の修理にも、レントゲンやCTスキャンなんていうものがあればもっと楽なんですが・・・。

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明日はオークション。
オーダーをもらっている車が出品されていて、神戸ならやはり現車をチェックせねば。

明日も冬型だし、低気圧も対馬海峡あたりに停滞しているから、また雪かもしれない。

突堤は寒いぞ、きっと。


and so on,

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by yoshimi-auto | 2011-02-11 18:19 | column
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あるボルボショップの日常、悪戦苦闘の日々。
by yoshimi-auto
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